1.はじめに

2026年3月20日に開催された JaSST’26 Tokyo にオンラインで参加し、いくつかのセッションを視聴しました。 AI の活用や品質の捉え方といったテーマを通じて、日々の業務だけでなく、これからのキャリアの方向性についても考えさせられる内容が多くありました。 本記事では、それらの内容を備忘録として講演のポイント、感想の2つの切り口から整理し、最後にまとめとして全体の通しての学びについて触れます。

2.セッション別メモ

2-1.A1)When AI Joins the Test Team: Promise, Pitfalls, and the Future of Software Quality

講演のポイント

AI は単なる自動化ツールではなく、観察して提案する「協働者」としてテスト活動に入りつつあり、機能テストに限らず非機能領域まで含めてテストのスピードを大きく向上させると述べられていました。

一方で、AI の出力に対する過信や誤った安心感といったリスクも指摘されており、特に探索的テストでは、意図や過程が見えにくくなる点が課題とされていました。

感想

探索的テストにおいては、AI の挙動や経過を追えないまま結果だけを受け取ると、その妥当性を判断することが難しくなるのではないでしょうか。 結果が高速に得られるほど、「どのような意図で、なぜその結論に至ったのか」を説明できることの重要性は高まるでしょう。

また、実務面では AI に与えるコンテキスト(ドキュメント)の整備コストが無視できないという話題もありました。 仕様や前提、判断基準を揃える必要があり、テスト実行が高速化する一方で、準備や整備の比重が増えていると感じました。

そのため、AI を活用する際は責任範囲を事前に整理する必要がありそうです。どこまで採用するのか、何を根拠として扱うのか、最終判断を誰が担うのか など。AI を活用することで移譲できることは増えたけど、この責任範囲の事前検討はじめ、依然として抱える業務はありそうです。むしろ、AI が返す回答を理解するためにこれまで以上に調査が求められるのかもしれない、、と思ったら 生成AIパラドックス という概念があるようですね。

cf. AI時代のソフトウェア開発はなぜ停滞する? 「AIパラドックス」を解消するための戦略とは | gihyo.jp

2-2.D2)品質を経営にどう語るか

講演のポイント

品質を重視しているだけでは経営層に価値は伝わらず、事業への影響という観点で説明する必要があるとされていました。特にAI活用が進むことで非構造データが増え、従来のようにテストの積み上げだけで品質を説明することが難しくなっているとのことです。

そのため、品質を事業 KPI やリスクと結びつけて伝えることが重要であり、あわせて CoQ についても既存の仕組みに組み込んで無理なく運用することの重要性が述べられていました。

感想

品質を「テストした/していない」という観点ではなく、事業 KPI にどのように接続するかで捉える必要があると感じました。

また、品質を経営に伝えることは単なる説明ではなく、経営の意思決定に接続するためのナラティブに近しいかもしれません。そのためには、経営がどのような前提や関心で意思決定しているのかを理解し、その文脈に合わせて品質の情報を再構成しなければならないでしょう。

この点で、QA と経営層のあいだに 共通プロトコル を設けるという考え方は非常に納得感がありました。 どの指標で、どの粒度で、どのように品質を評価・共有するのかなど、、。これらをあらかじめ揃えておくことで、説明のたびに解釈がぶれることを防ぎ、意思決定にスムーズにつなげられそうです。(言うは易く行うは難し、、。)

また、CoQ については有用な考え方である一方、算出にコストがかかりすぎると継続が難しくなります。既存のメトリクスや仕組みに組み込み、無理なく運用できる形にすることが重要だと考えます。

私のネクストアクションは「全社会議や議事録に目を通す」時間をちゃんと作ることです笑。

3.全体を通しての学び

全体を通しての学びは、AI の台頭によって「品質における判断」と「接続」の重要性がより明確になったという点です。

AI は新たな課題を生んだというよりも、もともと存在していた「判断」と「接続」という論点を顕在化させたと捉えてもよいかもしれません。また、生成AIパラドックス という概念を知ることができたので、今目の前の AI 垂心の取り組みは サイロ化を進めかねないのでは?と見つめなおしたいです。

運営に携わったみなさま、登壇されたみなさま、おつかれさまでした。とてもたのしい一日でした。ありがとうございました。